近場の山に行くつもりで出かけたら、途中で気が変わって蝶ヶ岳まで行ってしまいました。三郷スカイラインの冷沢登山口から鍋冠山を越えて、26.7km・のぼり2,065m・8時間12分。梅雨とは思えない快晴で、稜線に出た瞬間に見えた北アルプスがすべての原因です。人にはほとんど会わず、代わりにサルとサンショウウオに会いました。
コースデータ
| 日付 | 2025年6月28日(土) 日帰り |
| ルート | 冷沢登山口 → 鍋冠林道 → 鍋冠山 → 稜線分岐 → 崩沢山 → 蝶ヶ岳 →(往路を戻る)→ 大滝山北峰・南峰 → 鍋冠山 → 冷沢登山口 |
| 距離 | 26.7km |
| 累積標高 | のぼり2,065m / くだり2,070m |
| 行動時間 | 8時間12分(06:02〜14:14) |
| コース定数 | 53(きつい・標準タイム13時間49分で算出) |
| 天気 | 晴れ |
| メンバー | ソロ |
標準タイム13時間49分のコースです。今回はトレイルランニングで8時間ちょっとでしたが、歩くなら1泊を組むか、大滝山までで折り返すのが現実的だと思います。
この山について
蝶ヶ岳は標高2,677m。北アルプスの常念山脈にあって、穂高連峰と槍ヶ岳を真正面から眺められることで知られています。
蝶ヶ岳は「見る側」の山
穂高や槍に登ると、当然ですがその山自体は見えません。蝶ヶ岳は梓川を挟んだ向かい側にあるので、あの岩の壁を端から端まで見渡せます。しかも間に遮るものがない。
この日は6月末で、稜線にはまだ雪が残っていました。緑の斜面の上に白い峰が並ぶ景色は、夏でも冬でもないこの時期ならではです。
三郷スカイラインからのルートは、静かです
蝶ヶ岳の一般的な登山口は上高地または三股です。特に三股は人気で、駐車場の争奪戦になります。
今回使った三郷スカイラインの冷沢登山口は、そことは別の世界でした。朝6時の駐車場に4台。すれ違った人は3人だけ。近場の駐車場争いとは無縁です。そのぶん距離は長くなりますが、静かに歩きたい人には向いています。
ただし人が少ないということは、クマと会う確率が相対的に上がるということでもあります。実際、林道の入口には熊出没注意の看板が立っていました。
アクセス・駐車場
押さえておくべきは、駐車場が10台しかないことと、冬期は道路が閉まることの2点です。
| 最寄りIC | 長野道 松本IC |
| 駐車場 | 冷沢登山口(約10台・無料・標高1,380m) |
| トイレ | あり |
| 道路 | 三郷スカイライン経由。12月上旬〜4月中旬は冬期閉鎖 |
| 林道 | 展望台先の分岐から右の鍋冠林道は一般車通行止め |

松本ICから国道158号で上高地方面へ、新村交差点を県道48号へ右折。上長尾交差点で県道319号に入って山へ上がっていくと、左手に駐車場があります。
10台という数字は少なく見えますが、この日は6時で4台。三股のように早朝から満車になる場所ではなさそうです。トイレもあります。
コースタイム一覧
| 時刻 | 地点 |
|---|---|
| 06:02 | 冷沢登山口駐車場 出発 |
| 06:03-06:05 | 三郷スカイライン展望台 |
| 06:52 | 登山道入口(ここまで林道歩き) |
| 07:49-07:52 | 鍋冠山(2,194m) |
| 09:20 | 稜線分岐 |
| 09:50-10:00 | 崩沢山 |
| 10:23-10:32 | 蝶ヶ岳(2,677m) |
| 10:38-10:51 | 蝶ヶ岳ヒュッテ |
| 11:11-11:22 | 崩沢山 |
| 11:45-11:48 | 大滝山 北峰 |
| 11:54-11:57 | 大滝山 南峰(2,616m) |
| 12:56-13:00 | 鍋冠山 |
| 14:14 | 冷沢登山口駐車場 着 |
区間レポート
駐車場〜登山口:まず林道を50分
このルートの最初の関門は、登山道にたどり着くまでが遠いことです。
駐車場を6時02分に出て、鍋冠林道を歩きます。一般車は通行止めなので、ここは歩くしかありません。登山道の入口に着いたのが6時52分。50分の林道歩きです。

歩き出してすぐ、サルを見かけました。そっとしておきます。そして林道にはこの看板。人に会わないルートなので、クマ鈴は必須だと思って歩いていました。

登山道の入口は、林道を歩いていると見落としそうな場所にあります。道標は出ていますが小さめなので、注意していてください。
入口の近くには「冷沢用水の由来」という古い案内板が立っていました。ここから村へ水を引いたそうです。山の水が里の暮らしにつながっていた跡が、こういう形で残っています。
鍋冠山〜稜線:長い樹林帯
正直に言うと、この区間はひたすら地味です。
7時49分に鍋冠山(2,194m)。標識はありますが展望はほとんどありません。そこから稜線に出るまでがさらに1時間半。「まだまだー」と自分に言い聞かせながら歩く時間が続きます。
途中から樹相が変わって、高山の森らしくなってきます。標高が上がっている実感はあるのですが、視界は開けません。
そして9時20分。稜線分岐に出た瞬間に、すべてが変わりました。最後の急登はつらかったのですが、それを一発で忘れる景色でした。

3時間以上樹林の中を登ってきて、いきなりこれです。ここで「大滝山までのつもりだったけど、蝶ヶ岳まで行こう」と決めました。この景色を見せられたら、そうなります。
稜線歩き:ハイマツとサンショウウオ
ここからが、このコースのごほうび区間です。
ハイマツの中を抜けていく道になります。稜線のハイマツの中を歩くって贅沢ですよね。膝下くらいの高さの緑を分けながら、右手にずっと北アルプスがある。この時間のために登ってきたようなものです。

崩沢山のあたりには小さな池がいくつかあります。そのひとつを覗き込んで、思わず声が出ました。

サンショウウオでした。近くにはゼリー状のかたまりもあって、たぶん卵です。この標高でこれが見られるということは、水がそれだけきれいだということ。地味な樹林帯を3時間歩いた先にこういうものがあると、報われた気持ちになります。
蝶ヶ岳:正面に穂高

10時23分、蝶ヶ岳に到着。快晴です。
谷を挟んだ向かい側に穂高連峰が壁のように立っています。残雪の白と岩の黒と緑のコントラストが、6月末ならでは。写真を何枚か撮って、早々に退散しました。お腹が空いていたので。

蝶ヶ岳ヒュッテの周辺はテント場になっていて、たくさんのテントが張られていました。ここまで静かなルートを歩いてきたので、急に人が多くなって不思議な感じがします。
下山の途中、蝶ヶ岳のスタッフの方が草刈りをしてくれていました。歩きやすい道は、こういう人たちの手で保たれています。ありがたい。
大滝山に寄り道して下山

帰りは大滝山に寄り道しました。11時45分に北峰、11時54分に南峰(2,616m)。もともとはここが今日の目的地だったはずです。
大滝山荘(大滝山ヒュッテ)もありますが、売店はありません。テント場はあります。このあたりは沼が多くて、静かな雰囲気の場所でした。
そこからは長い下りです。足に疲れが出てきたので、無理せず走ったり歩いたり。蝶ヶ岳まで行った後悔を少しだけ感じながら、14時14分に駐車場へ戻りました。

駐車場のすぐ手前に三郷スカイラインの展望台があります。安曇野が一望できて、ここまでは車で来られます。登山をしない人でも寄る価値のある場所なので、ドライブがてらぜひ。
総評
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 道 | 危険箇所はなし。鎖もハシゴもない。ただし林道50分+樹林帯3時間と、長さで効いてくる。6月末は残雪とぬかるみが残る |
| 景色 | 稜線に出るまでは展望なし。出た瞬間に穂高・槍が正面。落差が大きいぶん印象に残る |
| 補給 | 蝶ヶ岳ヒュッテ以外に売店なし。大滝山荘にも売店はない。水と行動食は全部持参 |
| アクセス | 松本ICから。駐車場10台・無料・トイレあり。冬期閉鎖あり |
| 注意点 | コース定数53「きつい」/標準タイム13時間49分/クマの出没エリア/人が少なく助けを呼びにくい |
下山後のお楽しみ
三郷から下りてくると、安曇野の温泉がすぐそこにあります。名前がそのまま安曇野蝶ヶ岳温泉です。
| 施設名 | ほりでーゆ〜四季の郷(安曇野蝶ヶ岳温泉) |
| 住所 | 長野県安曇野市堀金烏川11-1 |
| 電話 | 0263-73-8500 |
| 営業時間 | 10:00〜21:30(受付21:00まで) |
| 料金 | 大人700円/小学生400円 |
| 定休日 | 第2水曜日(5月・8月・10月・11月は営業) |
| 駐車場 | 250台・無料 |
登った山の名前がついた温泉に、下山後そのまま入れる。こういう巡り合わせは気分がいいものです。常念岳を望む露天風呂もあります。
まとめ
「近場でいいや」と思って出かけて、結局2,677mまで行ってしまった一日でした。原因ははっきりしていて、稜線に出た瞬間の景色です。あれを見て引き返せる人はなかなかいないと思います。
帰り道では「今度は大滝山までで十分かな」と思っていました。でも次も同じことを繰り返す気がしています。
こんな人におすすめ
- 人の少ない山を歩きたい人:この日すれ違ったのは3人。三股とは別世界です
- 穂高や槍を眺めたい人:登るのではなく見る山として、蝶ヶ岳は最上級です
- 長い距離を歩く練習をしたい人:危険箇所がないぶん、距離と時間に集中できます
このルートを歩くなら
蝶ヶ岳まで日帰りで往復するのは、標準タイムで13時間49分。走らないなら現実的ではありません。大滝山までで折り返すか、蝶ヶ岳ヒュッテか大滝山荘に1泊を組むのがいいと思います。
蝶ヶ岳だけが目的なら、三股から登ったほうが圧倒的に短い。それでもこのルートを選ぶ理由は、静けさとハイマツの稜線にあります。
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